2018 年 33 巻 5 号 p. 377-389
薬物の消化管吸収は体内動態を左右する重要な因子であり、医薬品の経口製剤化が求められる中で吸収性の改善を目的として経口DDSの開発が進められている。トランスポーターは、化合物の消化管吸収・組織移行性に関わることから、薬物の膜透過性向上の標的として期待される。また最近では、トランスポーターが膜表面タンパク質であることから、基質認識性を利用したDDSキャリアの表面修飾によってトランスポーターに認識させ、内包した高分子薬物をエンドサイトーシスによって細胞内移行させる手法が報告されている。本手法では適応できる薬物が制限されないため、さまざまな薬物への応用が期待される。本稿では、消化管トランスポーターを標的とした消化管吸収改善のアプローチの現状を紹介するとともに、トランスポーター特性を利用した、安全性・汎用性の高い経口DDS開発に向けた今後の展開について解説する。