日本皮膚科学会雑誌
Online ISSN : 1346-8146
Print ISSN : 0021-499X
ISSN-L : 0021-499X
原著
黒色腫の血清腫瘍マーカーとしてのmelanoma inhibitory activity(MIA)の有用性
八田 尚人松下 幸世竹原 和彦高田 実
著者情報
ジャーナル 認証あり

2003 年 113 巻 2 号 p. 145-149

詳細
抄録

本研究では黒色腫の腫瘍マーカーとして近年注目されているmelanoma inhibitory activity(MIA)の有用性を多数例の日本人黒色腫患者を対象に検討した.血清中のMIA値はenzyme-linked immunoabsorbent法で測定した.73例の初診時における血清MIA値の平均値はstage Iで6.5±2.0 ng/ml,stage IIで7.8±4.2 ng/ml,stage IIIで8.2±3.7 ng/ml,stage IVで32.9±20.1 ng/mlであり,黒色腫の進展に伴い上昇することが確認された.さらに,根治術を行い得た31例(stage I 9例,stage II 14例,stage III 8例)において術後定期的に血清MIA値を測定した.31例中9例では12~77カ月の経過観察中に転移が出現し(再発群),残りの22例では少なくとも術後1年間転移がみられなかった(非再発群).再発群の9例中8例では再発4~53カ月前から,再発時には全例MIAが異常値を示した.一方,非再発群の22例では8例に1回以上異常値が観察された.以上よりMIAは術後経過観察における転移の早期発見のマーカーとして有用であることが示された.また,再発例9例中5例は手術直後から転移出現まで持続的にMIAが異常値を示しており,MIAの持続的高値は潜在性の転移の存在を示唆する所見と思われる.非再発群にも特にstage IICの症例で同様のMIAの持続高値を示す症例があり,このような例では注意深い経過観察が必要と考えられる.

著者関連情報
© 2003 日本皮膚科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top