日本皮膚科学会雑誌
Online ISSN : 1346-8146
Print ISSN : 0021-499X
ISSN-L : 0021-499X
原著
マキサカルシトール軟膏外用療法中に著明な高カルシウム血症を来した尋常性乾癬の2例―発症機序と危険因子について―
岩田 洋平岩田 貴子小寺 雅也臼田 俊和菅原 京子浦田 喜子
著者情報
ジャーナル 認証あり

2003 年 113 巻 3 号 p. 271-279

詳細
抄録

尋常性乾癬の外用療法としては,従来ステロイド外用剤が主流となっていたが,近年活性型VitD3外用剤の優れた臨床効果と安全性が認められるようになり,現在では外用療法の第一選択としての地位を占めるようになってきている.すでに供用されているタカルシトール軟膏やカルシポトリオール軟膏に続いて,2001年より発売開始となったマキサカルシトール軟膏は,さらに臨床効果が強く副作用が少ない製剤を目指し,本邦で開発されてきたVitD3外用剤である.今回著者らは,マキサカルシトール軟膏外用中に著明な高Ca血症を来した2症例を経験した.VitD3外用剤による高Ca血症の発症の危険因子としては,次の4点が重要であると考えられた.すなわち①過量の外用,②経皮吸収が亢進した皮膚の状態,③合併症(とくに腎機能障害)の存在,④併用薬剤の影響である.自験2例では,ともに規定範囲内の外用量であったにもかかわらず,腎機能障害を有していたため重篤な高Ca血症を来したと考えられた.これまでの報告例においても,腎機能の低下した症例で高Ca血症が重篤となる傾向が認められているので,腎機能の低下した症例では,重度の高Ca血症を来す危険性が高いと考えられる.危険因子を有する症例に対してVitD3製剤を使用する際には,外用剤の慎重な選択と使用量の決定が必要である.

著者関連情報
© 2003 日本皮膚科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top