生物環境調節
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カイコの走光性行動に関する研究III
桑葉の揮発成分による幼虫の走光性の抑制
清水 勇加藤 勝
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1985 年 23 巻 4 号 p. 89-97

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抄録
カイコの孵化幼虫は桑葉の摂食, あるいはその揮発性物質を感知することによって, 走光性応答を喪失した.この走光性の喪失は, 桑葉が存在しないと徐々に回復した.桑葉のメタノール抽出物も走光性抑制効果をもち, 分画実験によって, この作用をもつ揮発性の物質は, 幼虫の誘引物質とは異なるものであることが示された.幼虫の走光性の抑制は, 視覚レベルでの光受容機能の低下によるものではなく, 電気刺激によって回復することから, 中枢神経系の関与が示唆された.桑葉によるカイコ幼虫の走光性の抑制の適応的意味は, 幼虫が光に対する反応を失って食草への定着を確かなものにするためであると推定した.
桑粉末を含まない人工飼料を摂食させても, 摂食後24時間では, 走光性はほとんど低下しないことから, 摂食活動そのものによる走光性抑制は起こらないことが示された.しかし, プロビタミンAを含むが桑粉末を含まない飼料を摂食して発育が進むと, 走光性は次第に低下するので, 発育に伴う生理的状態の変化も幼虫の走光性応答に影響していることが示された.
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© 日本生物環境工学会
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