抄録
国際宇宙ステーションに搭載される細胞培養装置を用いて, 矮性植物のseed to seed実験が行われる予定である.必要空間と電力消費を低減するために, 物理環境要因を調節できる細胞培養装置用簡易制御システムの開発が必要である.著者らは, 換気した培養器の側面を冷却するシステムを開発し, 側面冷却が培養器内の温湿度や水循環効率におよぼす影響を地上実験にて調べた.アルミニウムでできた冷却板を培養器の1側面に外側から接触させた.冷水をポンプによって冷却板とペルチェクーラー間に循環させた.冷却板温度が6.3℃のとき, 冷却面温度と気温は18.7℃および23.2℃と, それぞれ冷却処理しなかった対照区より6.6℃および2.6℃低かった.培養器内の相対湿度は冷却処理によって90%以下へ下げることができた.外気の相対湿度が30%のとき, 冷却面温度7.5℃での培養器からの水蒸気損失速度は0.90μmols-1と対照区より0.95μmols-1低かった.これは, 冷却面への水蒸気凝結が促進されたためと考えられる.次に, 外気湿度の増加が培養器内の水循環効率におよぼす影響を調べるため, 蒸発と凝結に関する境界層コンダクタンスおよび換気率を求め, 水蒸気輸送モデルを構築した.このモデルを用いて, 内部湿度, 水蒸気損失速度, 蒸発速度および凝結速度を外気湿度の関数として計算した.その結果, 冷却面温度が75℃, 外気湿度が90%のとき, 培地から蒸発した水蒸気の98%以上が冷却面へ凝結すると推定された.これらの結果は, 側面冷却と培養器周囲の高い湿度が培養器からの水損失を低減し, 容器内の水循環効率を高めることが可能であることを示す.国際宇宙ステーションの細胞培養装置内では相対湿度を制御できるため, 側面冷却システムは有効に機能すると考えられる.