生物環境調節
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パラボリックフライト中の低重力および微小重力下での親水性繊維を用いた吸水システムの性能評価
谷 晃斎藤 高弘北宅 善昭高橋 秀幸後藤 英司
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2000 年 38 巻 2 号 p. 89-97

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抄録

微小重力下およびgジッター存在下で水と空気の混在する容器から吸水し, 植物栽培培地へ供給するために, 親水性繊維を用いた吸水システムを開発し, 飛行機を用いた放物線飛行で実現した0.Ol~0.02gの低重力下でその性能を調べた.実験に用いた容器は, 濾過用の吸水口を持つフラスコであった.親水性繊維を容器の内側に配置し, 一端を吸水口の内側に取り付けた.容器内の水量が220mLで親水性繊維を配置していない場合, 水は内壁に沿って5mm上昇しただけで, 吸水口まで達しなかった.一方, 親水性繊維を用いた場合, 水は繊維に沿って吸水口に達しローラーポンプによって吸引できた.吸水量は, 容器内の水の量や繊維の種類によって異なった.パラボリックフライト中に容器を浮遊させた場合 (10-4g) も, 容器内の水は繊維に沿って広がり, 水膜の形成が観察された.このように10-4gの微小重力下でも水を親水性繊維表面に集めることが可能であった.これらの結果は, 微小な重力が突発的に起こるgジッター下および微小重力下で, 本吸水システムを用いることで容器から吸水できることを示す.低重力下で水のみを吸引することは不可能であったが, 植物へ水を供給する場合, 根圏に気相, 液相が共存するため, 気液分離の必要はないと考えられる.

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© 日本生物環境工学会
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