応用生態工学
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事例研究
栃木県北部におけるホンドタヌキの生息適地予測とダム建設の影響評価
田頭 直樹佐伯 緑園田 陽一千田 庸哉松江 正彦
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2010 年 13 巻 1 号 p. 49-60

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抄録
生態系に係る典型性の定量的評価を目標とし, これまで環境影響評価で軽視されてきた普通種のタヌキNyctereutes procyonoides を対象に, 生息適地モデルの開発と, ダム事業による生息地変化およびタヌキへの影響を予測した. モデルの構築には, テレメトリー追跡データから移動速度に着目した滞在型行動圏を抽出し, 地形分類と植生分類から成る生息地基盤データを説明変数とした多変量解析等の統計学的手法を用いた. 供用後の影響予測には, 湛水する範囲を非生息域に変換してモデルを適用した. その結果, 生息適地の面積の減少に加え, 生息適地の断片化が著しいことが明らかとなった. 本研究の成果から, ダムによる環境影響評価は, 湛水域と, 植生や地形とそれらの連続性についても言及する必要があることが示唆された. また, 生息適地モデルによる予測結果は, 影響の大きい場所や断片化を定量的・視覚的に把握することができ, 効果的な保全対策の立案へ寄与するものと考えられる.
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© 2010 応用生態工学会
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