応用生態工学
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事例研究
葉柄の刈払いがハス Nelumbo nucifera の枯死に及ぼす影響
藤本 泰文
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2018 年 21 巻 1 号 p. 37-43

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抄録

富栄養化した湖沼ではハス Nelumbo nucifera の過剰繁茂による水質汚濁や生物多様性の劣化が問題となっている。このため,刈払い等によるハスの管理活動がいくつかの湖沼で行われてきた。ハスの効果的な管理手法の開発のため,刈払いがハスの生残に及ぼす影響を伊豆沼に隣接する試験池で評価した。試験池に生育していた 2 ~ 36 枚の葉を持つ 22 株のハスについて,葉の葉柄を水面下 40 cm の位置で刈払ったところ,8 株(36.4%)が枯死した。枯死した株の刈払い前の平均葉数(4.5 ± 0.8 枚,最小~最大:2 ~9 枚)は,生残した株の葉数(11.9 ± 2.8 枚,最小~最大:3 ~36 枚)の半数以下であった。 この時,3 日以内に水面に新しい葉を出葉させた株は生残し,出葉できなかった株はそのまま枯死していた。そこで,葉数 1 ~38 枚の葉を持つ 11 株のハスについて,水面への出葉を阻害するよう,短い間隔で刈払ったところ,刈払い前の葉数に関わらず全ての株が 3 日以内に枯死した。この結果は,出葉の可否が刈払い後の生死を決定する重要な条件であることを意味する。したがって,葉数の少ない時期を中心に,繰り返し刈払う管理方式は,出葉の阻害に着目した有効な手法になると考えられる。

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© 2018 応用生態工学会
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