「伝統知」とは,それぞれの地域で世代を超えて受け継がれてきた知識・知恵の体系であり,それは生物多様性保全や持続可能性等の文脈で近代知とは異なる価値を期待されている。一方で,近年の人類学における知識や技術をめぐる議論では,B. ラトゥールに代表されるように伝統知と近代知を二分法的なものととらえず,それがいかに翻訳され変容するかに焦点を当てる。この観点から,本稿では筆者らが取り組む在来作物に関する事例を紹介し,伝統知は固定的な実体としてあるのではなく,社会・経済・環境的条件との織り合わせに着目する必要性を示した。そして今後の課題として,織り合わせの産物への着目と,多分野協働プロジェクト推進の2 点を提示した。