森林総合研究所研究報告
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育林経営再編の諸相-林業ビジネス化への示唆-
大塚 生美 堀 靖人山田 茂樹岩永 青史天野 智将駒木 貴彰餅田 治之
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2018 年 17 巻 3 号 p. 233-248

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抄録
今日のわが国林業は、丸太価格の低迷により森林所有者は経営意欲を喪失し、林地を売却したり、再造林や保育施業を放棄するといった動きがある。しかし同時に、木材加工業などの原木を必要とする事業体の一部には、事業規模を拡大するとともに、事業内容を高度化・多様化させ、林業経営までをも行うようになってきている。また、30年間、40年間といった経営委託ともいえる長期施業受委託ともみることができる事例も見られるようになっている。このように、今日、わが国林業を巡っては、林業経営の再編が進行しているようにみえる。振り返って、2008年、筆者らは森林信託の商品化を検討していた大手金融機関2行と、わが国での森林信託の可能性について、日本の林業の実態に基づき意見交換を実施する機会を得た。その結果、大手金融機関にとっての信託商品化として、次の点が主要な課題であることが明らかになった。①林業のキャッシュフロー確保が不透明であること、②協同する専門家・機関の不足感があること、③不動産の物的状況、権利態様が不安定であることの3つである。そこで、本論ではその3つの課題に対する林業経営再編の新たな動きを捉え、その要因を考察することを目的とした。研究方法は、上記の3つの課題に対して、主に2000年以降、新たな展開が確認できた事業体等への訪問調査により実態を把握した上で、それらの事業体から共通して得られた新たな展開の背景・要因について、追跡調査とともに公表データ等文献調査によった。結果、大手金融機関の信託商品化に応え得るような林業ビジネス化の条件が浮き彫りになった。
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