2018 年 17 巻 3 号 p. 249-257
2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故以降、高レベルの放射性セシウム(134+137Cs) が検出された10種以上の日本の野生山菜に出荷制限が課されている(2017年7月31日)。しかし、環境から野生山菜への放射性セシウムの移行やそれに影響を及ぼす要因を調べた研究はほとんどない。2016年6月に福島県4町村の100地点で多年生草本のフキ(Petasites japonicus) の野生個体から葉柄を採取した。リター中の137Cs量や深さ 5cm までの土壌137Cs量はともにフキ葉柄 137Cs濃度(P < 0.001) や空間線量率( ADR, P < 0.01) と有意な関係があった。ADR とフキの葉柄 137Cs 濃度の関係を回帰分析し、ADR 値が広範囲に亙る28地点で2016年4月に採取した葉柄データで検証した。6月と4月の間で回帰式の傾きに有意差はなかった(P = 0.494)が、Y 切片は有意に異なった(P = 0.0002)。同じ ADRのときの6月の137C濃度は4月の約5倍で、4月と6月の間に137Cs 濃度が上昇したことを示唆した。葉柄の含水量と134Cs/137Cs 濃度比にもとづいて、2016年6月の葉柄生重当たりの134+137Cs 濃度の95% 予測区間を求めたところ、予測区間は予測値の約1/8 ~ 8倍の間にあった。137Cs 濃度の季節変化の幅が大きいことから、フキの137Cs 濃度の時間的変化についてさらなる研究が必要と考えられる。