森林総合研究所研究報告
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四万十川上流の森林流域における2000 ~ 2015年の降水と渓流水の水質モニタリング
酒井 寿夫 山田 毅鳥居 厚志篠宮 佳樹稲垣 善之吉永 秀一郎野口 享太郎森下 智陽
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2019 年 18 巻 1 号 p. 129-187

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抄録
2000 年以降、四国の四万十川上流域に位置する高知県高岡郡梼原町の森林において降水と渓流水の水質モニタリングを行ってきた。降水は1カ所で、渓流水は7 つの森林流域で採取した。本報告では、2000年から2015年のデータを用い、降水や渓流水成分への降水量の影響について解析し、それらの経年変化の傾向について概観した。降水については、期間降水量が少ないほどECが高く、pHの変動範囲が大きかった。長期的にみると、降水のpH、ECの年平均値および各成分の年流入量には増加減少などの方向性をもった変化は見られなかった。渓流水については、採取日前14日間の積算降水量が増えると明らかにECが低くなった。また、積算降水量は渓流水のpH に大きく影響することはなかった。長期的にも渓流水のpH の年平均値は安定的に推移していた。一方、渓流水の溶存成分濃度については、2007 ~ 2015 年にかけて、7 つの森林流域すべてにおいて、Na+ 、Ca2+、Mg2+ の濃度が低下する傾向にあり、ClとSO42-については明らかな濃度の低下が見られた。この濃度の低下傾向が今後もしばらく続くかどうか注視する必要がある。
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© 2019 森林総合研究所
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