抄録
本研究では、試片寸法が100mm (L) × 20mm (R) × 20mm (T) のスギ (Cryptomeria japonica D. Don) 心材試片について、超臨界二酸化炭素を用いてアセチル化処理し、繊維方向における質量増加率(WPG)の分布状態を測定した。アセチル化処理には連結された2つの反応容器を用い、一方の反応容器には垂直に固定された全乾試片と少量の無水酢酸を入れ、もう一方の反応容器に入っている超臨界二酸化炭素と無水酢酸を注入してアセチル化処理を行った。処理条件は120℃・10~12MPa・8時間で、無水酢酸量は様々に変化させて実験を行った。その結果、超臨界二酸化炭素とともに注入された無水酢酸は、主として上部木口面から試片内部へと浸透し、試片上側のアセチル化反応に寄与することが明らかとなった。一方、試片とともに反応容器に入っていた無水酢酸は主として底部木口面から試片内部へと浸透して、試片下側のアセチル化反応に寄与することが示唆された。これは、容器内で気体となっている無水酢酸が、注入された超臨界二酸化炭素によって試片内部へ押し込まれたためと推測される。そして、両方の反応容器に適量の無水酢酸を入れておくことで、試片全体を均一にアセチル化できることが明らかとなった。