森林総合研究所研究報告
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四万十川源流域の渓流水質の特徴 -1999年から2000年にかけて実施した調査結果-
吉永 秀一郎 山田 毅稲垣 善之三浦 覚篠宮 佳樹
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2021 年 20 巻 2 号 p. 101-120

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抄録

四万十川の平水時の清流環境に対する源流域の渓流水質の寄与を評価するために、広見川流域を除く源流域において夏季(92流域)と冬季(104流域)の渓流水の溶存成分濃度を測定した。溶存成分組成は地質の違いによる影響を受け、調査流域の大半を占める四万十帯流域ならびに秩父帯流域に対して、四万十帯石灰岩流域と秩父帯石灰岩流域は特異的にpH、ECが高く、Ca2+、HCO3- 濃度が高い傾向を示した。また、花崗岩が分布する流域はpH、ECが低く、溶存成分濃度が全体として低い傾向を示した。Na+、Cl- 濃度は太平洋岸からの距離が大きいほど低い傾向を示し、海塩起源であることが推察された。Si、K+ 濃度は夏季の方が高く、Na+、SO42-、NO3--N、全窒素(T-N)濃度は冬季の方が高い値を示した。夏季と冬季の溶存成分濃度の違いは、風化による岩石からの溶出と、降水の季節変動等に支配された各溶存成分の濃縮・希釈の影響によると考えられた。これらの源流域におけるT-N濃度は、高知県が制定した四万十川清流基準の基準値である0.3 mg L-1 以下の流域が多く、平均T-N濃度も夏季に0.17 mg L-1、冬季に0.26 mg L-1 であった。このことから平水時の四万十川の清流環境の維持に森林流域からの渓流水が寄与していることが示唆された。

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