東京都八王子市の森林総合研究所多摩森林科学園で採集された長翅目5種(シリアゲムシ科3種、ガガンボモドキ科2種)を記録した。これらの種の季節消長パターンを標本の採集日付と2017年に実施したトランセクト調査に基づき調べた。1化生種のうちキシタトゲシリアゲPanorpa fulvicaudaria Miyake とキアシシリアゲPanorpa wormaldi McLachlan は主に4–5月、クロヒメガガンボモドキBittacus takaoensis Miyake はほぼ5月前半のみに出現したが、ヤマトガガンボモドキBittacus nipponicus Navás はより遅くかつ長く6–7月に出現した。年2化生のヤマトシリアゲPanorpa japonica Thunberg は第1化が5–6月、第2化が8月下旬–10月に出現した。クロヒメガガンボモドキは1913年の記載以来、原記載地の高尾山とその周辺で記録がなかったが、出現期間が早く短いため発見されにくいことがその理由であると考えられた。トランセクト調査で記録された世代あたり個体数はヤマトシリアゲの第1化が最多、次いでクロヒメガガンボモドキが多く、キアシシリアゲが最少であった。多摩森林科学園は東京都の低標高地としては比較的長翅目相が豊富であり、これは安定した森林環境を反映していると考えられる。