抄録
海岸に植栽された広葉樹には防風、防砂の他に津波被害の軽減の効果も期待され、太くて深い根系を持つ樹種によって構成されることが望ましい。手を加えられていない海岸砂丘と低湿地対策や津波後の海岸再生のために盛土、締固めをした海岸では土壌の硬さが異なり、根系、地上部の成長への影響が予想されるため、植栽木の成長と土壌特性を比較した。秋田県では海岸砂丘に落葉広葉樹(カシワ、ケヤキなど)を植栽した2か所(浜山、向浜)、千葉県では盛土の上に常緑広葉樹(タブノキ、ウバメガシなど)を植栽した2か所(富津、小松)で調査を行った。すべての調査地でクロマツが植栽されている。胸高直径、樹高、土壌の硬さを測定し、樹種ごとに2~4本ずつ、根の掘り取りを行った。直径1㎝以上の根の側方、下方の長さの測定を行い、固結層と根の深さを比較した。広葉樹の植栽木でクロマツの樹高を上回るものは見られず、胸高直径で富津のタブノキだけがクロマツを上回った。植栽後43年の浜山ではクロマツの直根が深さ1mの固結層より深くまで達し、カシワ、ケヤキでも一部の根の侵入が見られた。向浜では土壌は柔らかかったが、貧栄養や強風の影響で地上部の成長は悪かった。植栽後10年の小松では深さ30㎝の固結層で、富津では固結層や帯水層で根の成長が止まっていた。海岸林の根の成長には土壌の硬さだけでなく、樹種特性や硬さ以外の土壌特性も影響していることが推察された。