森林総合研究所研究報告
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海洋環境における木材・プラスチック複合材(混練型WPC)の劣化解析
小林 正彦 松永 正弘神林 徹石川 敦子山田 昌郎
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2022 年 21 巻 2 号 p. 113-128

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抄録

木材- プラスチック複合材(混練型WPC)(以下、WPC と略す)は、耐水性や耐朽性が比較的高いことから主にデッキ材等のエクステリア材料として利用されているが、国内のエクステリア市場において増加傾向が見られない近年の状況の中、用途拡大が求められている。本研究ではWPC がこれまであまり使用されてこなかった海洋環境におけるWPC の劣化について基礎的な知見を得るために、木材とプラスチックのみを原料とし、木粉率を60%から75%まで段階的に高めて製造したWPC を海洋環境に暴露し、木粉率の違いが劣化に伴う変色、質量変化、寸法変化、曲げ弾性率の変化、表面の化学変化などの物性の変化に及ぼす影響について詳細な検討を行った。その結果、海中暴露試験では延べ21か月間の試験期間を通し、海虫類の食害はほとんど認められず、質量減少率は数%程度であった。また、曲げ弾性率については、木粉率が高いWPC ほど大きく低下した。一方、飛沫帯暴露試験ではWPC は太陽光による光劣化をうけ、暴露初期に大きく変色することがわかった。また、暴露期間を長くするに従い、木粉率が高いWPC ほど変色した部分の剥落が認められた。また、曲げ弾性率については、飛沫帯では海中より試験片が水に接触している時間が短いにもかかわらず、海中暴露試験と同様の低下傾向を示した。得られた結果を基に、海洋環境におけるWPC の利用可能性について考察した。

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