森林総合研究所研究報告
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作業道作設を伴う間伐実施中の渓流水の懸濁物質濃度の定期調査
篠宮 佳樹小林 政広伊藤 優子大貫 靖浩坪山 良夫澤野 真治
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2022 年 21 巻 2 号 p. 103-112

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抄録

2012年と2013年に作業道作設を伴う列状間伐 (伐採率は本数で35%) が実施された茨城県内のスギ人工林・落葉広葉樹林からなる森林流域で、渓流を定時に採水して、間伐前と間伐中の、出水時を除く懸濁物質 (SS) 濃度を調べた。この間伐では作業道が全ての支流 (通常は水流が無い) に沿って建設された。2012年の間伐では、間伐実施中の定時調査においてSS 濃度が間伐前と比較して著しく増加することは無かった。しかし、2013年の間伐では、間伐実施中およびその直後において定時調査時のSS 濃度が間伐前に比べて有意に高くなった。さらに、高濃度のSS (175.4 mg L-1) が降雨終了から11時間以上経過後に採水した渓流水で観測された。この要因として、降雨後の湧出水が作業道の路面を侵食した可能性や、作業道の開設や集材作業などの林業機械による攪乱の可能性が考えられた。以上より、間伐実施中は出水時以外でも渓流水のSS 濃度が間伐前より著しく上昇する場合があることがわかった。

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