森林総合研究所研究報告
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研究資料
約500年前に建立された広島県尾道市の常称寺解体修理に伴う解体撤去部材調査
小島 瑛里奈 山岸 松平加藤 英雄安部 久渡辺 靖崇山本 健園田 誠嗣鈴木 律古川洋
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電子付録

2024 年 23 巻 2 号 p. 71-82

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抄録

日本の歴史的木造建築物において、その部材である木材は、当時の文化的・歴史的背景を知る上で重要な情報を有している。歴史的木造建築物の一つである広島県尾道市の常称寺本堂 (国の重要文化財) は、およそ500年前に建立され、その部材は建立当時のまま使われ続けてきた。本稿では、これらの部材のうち、今般の根本修理の際に構造部材としてこれ以上の利用に耐えないと判断された解体撤去材127本について調査した。樹種や密度、平均年輪幅などを調査するとともに、その材の断面写真および木口面、柾目面、板目面の3つの切片における光学顕微鏡写真をまとめた。調査した127本中、118本が地垂木、5本が通肘木、4本が飛檐垂木であり、すべての材にはシバンムシ科の甲虫によると思われる虫食い穴が多く認められた。光学顕微鏡による樹種識別の結果、127本中、119本がアカマツ (Pinus densiflora Sieb. et Zucc.)、8 本がヒノキ (Chamaecyparis obtusa (Sieb. et Zucc.) Endl.) であると判断された。また、虫食い穴などの断面欠損を無視し、供試材の最大寸法より算出したみかけの密度から、アカマツ材は現在の一般的な流通材と同程度であり、ヒノキ材はそれ以上であると考えられた。アカマツ材の木取りは、半数以上が心去り材で、ヒノキはほとんどが心持ち材であった。アカマツ材の平均年輪幅は一般的な材と比較してやや広く、ヒノキ材は同等であった。最後に、解体撤去材が用いられていた方角を調べたところ、西側および北側に多い傾向があった。

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