北海道恵庭国有林のトドマツ人工林伐採跡で地がき施業を実施した試験区において施業実施から7年後までのカンバ類の天然更新状況を検討した。トドマツ人工林の伐採および伐採後の地がき処理は2016年に実施された。試験区の一部には防鹿柵が設定されており、防鹿柵の有無と地がき処理の有無との組み合わせで4通りの試験設定となった。2018年、2019年、2021年、2023年にカンバ類を含む高木性樹種の更新状況を調査した。また競合植生となるクマイザサの被度および平均群落高も測定した。調査の結果、クマイザサの被度は2023年には防鹿柵内地がき区以外では100%に近い値となり、平均群落高も柵外地がき区以外では80~110 cm程度に回復していた。カンバ類の稚樹密度および樹高は防鹿柵の内外ではっきりした差が見られ、さらに柵内では地がき区の方が無処理区よりも稚樹密度が高い傾向にあった。施業から7年後の2023年には、樹高150 cm以上の稚樹密度は柵内地がき区ではヘクタールあたり1.8万本となっていた。一方、柵外では樹高150 cm以上にまで成長した稚樹はなかった。これらの結果から、適切なシカ対策をとれば、地がきは、トドマツ人工林伐採後のカンバ類の天然更新のために有効であると考えられた。