2024 年 23 巻 4 号 p. 127-134
島根県内で得られた子嚢菌類のカエンタケ Trichoderma cornudamae (ボタンタケ目ボタンタケ科) の子実体から双翅目キノコバエ科の Rymosia placida Winnertz, 1863 が羽化した。本種の種小名の日本語訳ならびに属名に対してすでに使用されていた和名に基づいて、本種の和名としてシズカトモナガキノコバエ (以下シズカ) を提唱した。毒きのことして知られるカエンタケ子実体を直接食害する動物として初めて、また、本種の寄主きのことしてカエンタケを初めて記録した。本種はヨーロッパで多くの記録があり、既に国内で北海道に分布することも知られていたが、本州から初めて記録した。カエンタケはアジア諸外国に広く分布し、国内でナラ枯れ跡地に発生する。国内各地でシズカがカエンタケを寄主きのことして利用していること、さらにこの寄主・寄生者関係が東アジアの森林で成立したことが考えられる。