1990 年 31 巻 2 号 p. 35-41
本研究は、教育現場で行われている小学校理科における教育評価の実態を捉えようとするものである。そこで、全国の小学校理科の実践記録(研究報告書、出版物)の教育評価を、①:領域とそれに対する方法、②:学習指導過程における評価の構造的特徴という2つの視点で分析した。分析①では、予め設定したいくらかのカテゴリーにデータを分類した。分析②では、学習指導過程における評価の構造的特徴を明らかにするため、具体目標と学習活動、さらに、評価計画を教材構造化法(Hierarchical Networks of Instructional Units Using the Interpretive Structural Modeling Method by Sato T.)を用いて分析した。結果は、以下の通りである。①:形成的評価においては、A: 知識・理解と科学的思考をノート、発表、挙手で、B: 観察・実験の技能をノートや行動観察で、C:自然に対する関心・態度をノートや観察行動で評価している。総括的評価においては、どの領域もペーパーテストで評価している。関心態度では、感想文で評価することもある。②:学習指導過程の構造は、図形的特徴から4つのタイプに分類できる。導入から展開まで内容ごとに分かれて応用・まとめで1つになっているタイプが最も少ない。他の3つは、同様な頻度であった。このような構造において、形成的評価の場合、形成されるべき領域に対して評価が毎時問行われている。学習指導過程の中では、導入で自然に対する態度、展開で観察・実験の技能と科学的思考、応用・まとめで、知識・理解を領域とした評価が行われているものが多かった。