わが国の高校生物教科書に記載された実験課題を分析し、そこに盛り込まれた要素的活動、その概略的構成・形態等を明らかにする。分析手段として米国アイオア大学の研究グループによって開発された「実験課題分析(LAI)」を用いた。その分析結果を理科教育の目標である探究能力の育成という観点から検討・吟味した。わが国の高校生物教科書に用意されている実験課題は探究を構成する重要な要素的活動に携わる機会を幅広く与えているとは言い難い。特に、科学的探究の本質である「問い」を定式化する活動が乏しい。「仮説の設定」・「観察・測定手順の計画」など比較的高度な認知的技能を獲得する機会もほとんど与えておらず、知的発達の促進・援助という観点からも充分な配慮がみられない。