日本理科教育学会研究紀要
Online ISSN : 2433-0140
Print ISSN : 0389-9039
中学年によって保持される体積置換についての多重概念
山本 健志
著者情報
ジャーナル フリー

1991 年 32 巻 2 号 p. 27-33

詳細
抄録

中学1年生を対象に、生徒が体積置換現象についての多重概念を保持するかどうかを調査した。調査には、媒体中の“流れ”の有無に生徒が着目するよう、物体を入れたときに媒体中に“流れ”が生じえる課題(流れ型課題)と、生じえない課題(非流れ型課題)とを対にして使用した。それぞれの課題対は、それを構成する二つの課題の順序を変えて二つのクラスに課され、生徒の応答パターンが比較された。その結果、調査対象となった中学生のかなりな割合が、流れ型課題と非流れ型課題との間で課題に対する応答を変更することが明らかになった。その応答の変更は、体積置換現象についての物体の“重さ”による見方と、物体の“体積”による見方との間の変更であり、課題順序が流れ型→非流れ型の場合は“体積”による正答が増え、その逆の場合は“重さ”による誤答が増える。これらの結果から、中学1年生レベルではかなりな割合の生徒が、体積置換についての“重さ”による見方と“体積”による見方との両方を多重概念として保持しており、ある体積置換課題にそれら二つの見方のいずれが適用されるかの決定には、その課題で使用される媒体の“流れ”の有無がどの程度目立つかが一つの重要な役割を果たしているように見える。

著者関連情報
© 1991 一般社団法人日本理科教育学会
前の記事 次の記事
feedback
Top