日本薬理学雑誌
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ミニ総説号「受容体・チャネル遺伝子の改変修飾と疾病・治療モデル」
ClC型Clチャネルの多彩な細胞機能
古川 哲史
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2003 年 122 巻 5 号 p. 375-383

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抄録
Na+チャネル·Ca2+チャネルなどの陽イオンチャネルに比べて,Clチャネルの細胞機能に果たす役割は今まであまり注目されていなかった.近年,数多くのClチャネルcDNAのクローニング,ヒト遺伝性疾患の原因遺伝子として複数のClチャネル遺伝子の同定,ノックアウトマウスの解析,Clチャネルタンパク質結晶のX線構造解析,タンパク質相互作用によるClチャネル制御など,Clチャネルに関して画期的な研究成果が相次いで発表された.細胞内膜Clチャネルは細胞内小胞の酸性化に重要であり,ClC-5は腎尿細管で低分子タンパク質の再吸収に関与し,ClC-7は破骨細胞osteoclastの骨基質吸収に関与する.これらの異常はそれぞれタンパク尿と腎結石を主徴とするDent病·骨過形成を主徴とする骨化石症osteopetrosisをもたらす.細胞表面膜ClチャネルのClC-K1,ClC-K2,ClC-3Bは上皮細胞に特異的に発現し,一方向性Cl輸送に関与する.これらの異常もヒト疾患と関連しており,ClC-K1の異常は尿崩症,ClC-K2の異常はBartter症候群をもたらす.
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© 2003 公益社団法人 日本薬理学会
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