日本薬理学雑誌
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実験技術
細胞内インスリン作用の評価法とGLUT4小胞輸送
今村 武史
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2010 年 136 巻 4 号 p. 225-228

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抄録

メタボリック症候群や糖尿病の成因・増悪因子と考えられるインスリン抵抗性は,インスリン作用の中でも特に,血糖降下作用の障害を主徴とする.血液中の糖は細胞内に取り込まれることによって減少することから,インスリン抵抗性の機序は最終的に,細胞内への糖取り込みというインスリン作用の障害に帰結されると言える.脂肪細胞などのインスリン標的細胞を用いたインスリン依存性糖輸送の分子機構は,これまで数多くの研究報告が蓄積され,全体像が次第に明らかとなってきた.これらの細胞ではインスリン刺激に反応して,糖輸送体タンパク質GLUT4に特異的な小胞が細胞膜表面へ輸送され,GLUT4タンパク質が細胞膜表面へ発現することによってはじめて細胞内への糖取り込みが可能となる.このインスリン依存性糖輸送のステップは,糖代謝におけるインスリン作用の律速段階であり,GLUT4タンパク質の細胞膜発現量はインスリン抵抗性の程度と逆相関することが知られている.つまり,GLUT4輸送に対するインスリン作用機構を理解することは,細胞レベルでのインスリン抵抗性機序の解明につながるものと考えられる.一方で,これまで糖輸送体GLUT4に関する多種多様な実験法が報告されてきたため,各実験結果によって示される範囲が曖昧になりやすく,目的を得るのに適した実験法の取捨選択に戸惑うところでもある.この稿では,糖輸送に関する細胞内インスリン作用の解析を行うための種々の実験法を紹介し,相違点とその長短を概説した.

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© 2010 公益社団法人 日本薬理学会
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