日本薬理学雑誌
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特集 脳における細胞内Ca2+ストアの制御機構と脳疾患の新たな治療戦略
高感度Ca2+指示タンパク質YC-Nano50発現マウスを用いた生体内アストロサイトの活動解析
金丸 和典
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2016 年 147 巻 4 号 p. 190-193

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抄録

グリア細胞の一種であるアストロサイトは,最小で数十ナノメートル幅ほどしかない極めて微細な突起を持ち,シナプスや血管を取り囲むなど中枢の細胞間隙を埋めるように存在する.主に急性脳スライス標本や培養アストロサイトにCa2+イメージングを適用した近年の研究から,アストロサイトが局所的な細胞内カルシウム濃度上昇(Ca2+シグナル)を起こし,これがシナプス伝達や血流を調節することが示唆されてきた.このようなex vivoあるいはin vitroの実験系で得られた知見を実際の生体内(in vivo)で検証することは重要であるが,従来法で生体内アストロサイトの微細突起を観察することは非常に困難である.著者らは,アストロサイト特異的に高感度Ca2+指示タンパク質YC-Nano50を発現する遺伝子改変マウスを作製し,微細突起を含むアストロサイト全体を高い時空間解像度でイメージングする手法を確立した.本稿では,その手法とこれにより得られた知見を中心に紹介する.

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© 2016 公益社団法人 日本薬理学会
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