日本薬理学雑誌
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各種高血圧モデルにおける新規アンジオテンシン変換酵素阻害薬キナプリルの降圧作用
矢岡 修青木 一巳中島 透瀬戸口 通英
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1993 年 102 巻 1 号 p. 35-45

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抄録

新規アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬キナプリルについて,正常血圧ラットおよび各種高血圧動物における単回および28日間連続経口投与による降圧作用をエナラプリルおよびカプトプリルと比較検討した.単回投与では,キナプリル(0.1~1.0mg/kg)は2腎性高血圧ラットで著明な降圧作用を示し,その作用発現は緩やかで,最大反応は投与5~7時間後に認められた.10mg/kgでの作用は投与24時間後まで持続した.2腎性高血圧ラットでの効力比較では,キナプリルはエナラプリルと同程度,カプトプリルの約40倍の活性であった.1腎性高血圧ラット(3~30mg/kg)および自然発症高血圧ラット(SHR,1~10mg/kg)では,キナプリルはエナラプリルと同等の降圧効果および持続性を示した.deoxycorticosterone acetate/salt型高血圧ラットでは,キナプリルおよびエナラプリルはいずれも降圧作用を示さなかった(3~30mg/kg).正常血圧ラットでは,キナプリルは高用量(30mg/kg)で軽度の血圧低下作用と心拍数増加作用を示した.2腎性高血圧ラット(1mg/kg)およびSHR(3mg/kg)における連続投与で,キナプリルは安定した降圧作用を示し,その降圧効果に耐性は認められなかった.さらに,2腎性高血圧ラットおよびSHRのいずれにおいても,キナプリルの降圧効果はエナラプリルに比較して強く,持続的であった.なお,キナプリルおよびエナラプリルは高血圧ラットにおける単回および連続投与において,心拍数に対して著しい影響を与えなかった.以上の成績より,キナプリルは各種高血圧モデルにおいて,強力,かつ持続的な降圧効果を有し,降圧剤として有用であることが示唆された.

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