日本薬理学雑誌
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実験的糖尿病および実験的高脂血症に対する漢方方剤(大柴胡湯,八味地黄丸,白虎加人参湯)の効果
後藤 正子井上 肇瀬山 義幸山下 三郎井上 治弓岡 栄三郎
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1989 年 93 巻 3 号 p. 179-186

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抄録
漢方方剤(大柴胡湯,八味地黄丸,白虎加人参湯)のエキスについて,実験的サイプロヘプタジン糖尿病における糖負荷時の血糖低下作用,および高脂肪食投与による実験的高脂血症における血清脂質低下作用を比較検討した.その結果,1)大柴胡湯は糖負荷30,60,120分後の高血糖を低下させ,耐糖能を改善した.また120分後の血清インスリン値を上昇させる傾向を示し,血清 glucose/insulin 比を低下させた.また,この方剤は実験的高脂血症における血清コレステロール値を低下させた.2)八味地黄丸は糖負荷30,120分後の高血糖を低下させたが,この時の血清インスリン値の上昇は認められず,むしろ血清グルカゴン値を上昇し,大柴胡湯とは異なる血糖低下作用機序を有すると考えられる.また,この方剤には高脂血症の低下作用は認められない.3)白虎加人参湯は耐糖能を改善せず,むしろ血清グルカゴン値を上昇させた.また,この方剤には高脂血症の低下作用は認められない.以上,三種類の漢方方剤の内,大柴胡湯は高脂血症をともなった糖尿病治療に効果を発揮する可能性を有する方剤と推測される.
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