2015 年 57 巻 6 号 p. 1373-1377
症例は66歳,女性.排便時に突然血便を認めたため夜間救急外来を受診した.1年前より発作性心房細動に対して,ダビガトラン内服が開始された.当院での初回大腸内視鏡検査で,S状結腸に茎様の構成成分を伴う粘膜下血腫を認めたため,同部位が出血源と考え入院後ダビガトランを中止し,絶食・補液管理にて経過観察とした.その後血便はなく,保存的加療のみで軽快した.心房細動に対してはダビガトラン中止のままピルシカイニド塩酸塩の内服を開始し,その後再出血なく病変は治癒した.新規抗凝固薬であるダビガトラン内服による大腸粘膜下血腫は本例が初めてであり,貴重な症例と考えられた.