2018 年 60 巻 11 号 p. 2407-2415
抗菌剤などの投与が原因となって発症するクロストリジウム・ディフィシル腸炎(Clostridium difficile infection,CD腸炎)は,高齢者や免疫不全患者では重症化し死に至ることもある.CD腸炎,特に難治性再発性CD腸炎に対する高い有効性から注目されているのが糞便微生物移植法(fecal microbiota transplantation,FMT)である.FMTは,内視鏡や経鼻チューブを用いて健康なドナー便を患者の消化管に直接投与する治療法である.最近では,カプセル化した便の経口投与や凍結ドナー便を用いたFMTも報告もされている.重篤な副作用はほとんどなく,CD腸炎に対する有効率は約90%に達する.一方,腸内細菌叢の変化が病態の形成に関与することが示されている炎症性腸疾患などについては,その有効性は未だ確立されていない.ここでは,当科で行っている潰瘍性大腸炎に対する内視鏡を用いたFMTの実際を解説する.