2022 年 64 巻 12 号 p. 2472-2488
後天的な消化管狭窄の成因は,進行癌,炎症治癒後の瘢痕,内視鏡治療後の瘢痕,外科手術の吻合など,一様でない.ところが消化管狭窄が治療の対象となるとき,その理由は一様で,通過障害を起こしたときである.上部消化管の場合は食物を,下部消化管の場合は消化吸収された後の便を通すための治療が行われる.切除適応の進行癌であれば,狭窄の解除とともに根治を目指した外科手術が第一選択として行われることがあるが,多くのケースで狭窄解除を目的とした外科手術は最後の切り札である.とりわけ良性狭窄に対しては外科手術回避のために,機械的な拡張術が第一選択の方法としてかねてから行われてきた.本稿では,下部消化管の狭窄に対して,内科的に行われる,特に内視鏡を用いた拡張術について,ブジー,バルーン拡張術,Radial incision and cutting(RIC)の順に,現状を述べる.かつてと比べて,内視鏡下に狭窄部が拡張される様子を確認しながら施行することが圧倒的に多くなっているが,機械的拡張術の方法論じたいは長年画期的なブレイクスルーがなく代わり映えしない.現状の抱えている問題点や将来展望についてもあわせて述べる.