2025 年 67 巻 5 号 p. 1083-1089
特に既往歴のない20代男性で右下腹部痛,発熱,下痢で発症したクリプトスポリジウム(Cryptosporidium:CP)症の1例を経験した.通常の便検査では原因不明であったが,腸生検組織検査にてCP原虫の存在が疑われ,生検組織のPCR検査によりCryptosporidium parvum(ウシ型)によるCP症と診断した.本症例のように単なるウイルス性腸炎にしては下痢などの腹部症状が高度で長期に及ぶ場合は,生活歴などの問診を詳細に行い,本症例をはじめとする寄生虫疾患を念頭に,便検査(抗酸菌染色やショ糖遠心浮遊法など)の追加を考慮する.また,病理医との連携の上で,生検を含む大腸内視鏡検査を行うことが重要である.