抄録
薬物による腐食性上部消化管炎を内視鏡的に経過観察した一例について報告した.症例は38歳女性,自殺目的でトイレの洗浄剤(サンポール)を服用し,吐血をきたし,緊急入院した.受傷後早期がら緊急内視鏡検査を施行し,食道,胃に出血,びらんを認めた.以後,食道狭窄が進行し,検査が不能となるまでの約2カ月間に計8回の内視鏡検査を施行し,粘膜の変化,病変の広がり等を観察した.本例では第114病日に食道,幽門狭窄のため胃,食道切除を施行し,術後51日で軽快退院した.腐食性上部消化管炎においては,障害範囲の決定,手術適応の決定等に,早期より内視鏡検査を積極的に行う必要があると考えられた.