日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
Print ISSN : 0387-1207
ISSN-L : 0387-1207
肝硬変による食道静脈瘤症例における上部消化管出血の内視鏡的検討
藤巻 英二狩野 敦河田 孝彦鎌田 広基加藤 博巳田沢 義人能戸 伸哉渡辺 英裕片山 佐登志佐藤 俊一阿部 裕行
著者情報
ジャーナル フリー

1987 年 29 巻 2 号 p. 275-281

詳細
抄録
 食道静脈瘤患者のうち,その原疾患が肝硬変であった126症例を対象として,出血例については緊急内視鏡により,その出血源を食道静脈瘤,胃静脈瘤あるいは消化性潰瘍等に明確にし,それぞれからの出血率と内視鏡所見との関連を,非出血例と対比して検討した.対象126例中,出血例は82例(65.1%)であり,食道静脈瘤からの出血例は55例(43.7%),胃静脈瘤からの出血は10例(7.9%),消化性潰瘍からの出血は21例(16.7%)であった.食道静脈瘤からの出血率は発赤所見,形態との結びつきが深く,teleangiectasia存在例も出血率が高かった.胃静脈瘤の合併率は30.5%で,胃静脈瘤からの出血率は食道静脈瘤が軽度の方が高かった.消化性潰瘍の合併率は29.7%で,合併例では潰瘍からの出血率が60%に及び,静脈瘤からのそれより高率であった.潰瘍からの出血率は食道静脈瘤の程度に比例する傾向があった.潰瘍の発生部位は通常の潰瘍と比較して,特に出血例で胃角部より肛門側に多い傾向があった.食道静脈瘤については発赤所見,形態,teleangiectasiaが重要であり,胃静脈瘤については胃静脈瘤自体の客観的指標が必要と考えられた.消化性潰瘍については,その頻度,好発部位より,静脈瘤患者の出血例でも十二指腸までの観察が必要と考えられた.
著者関連情報
© 社団法人日本消化器内視鏡学会
前の記事 次の記事
feedback
Top