日本消化器内視鏡学会雑誌
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噴門部癌性狭窄に対するNd:YAGレーザー治療
西福 幸二ニツ木 浩一中川 高志山本 邦男宮内 輝幸藤樹 敏雄赤沢 修吾神田 裕三阿部 荘一尹 聖哲村岡 光久須田 雍夫嶋田 定嘉
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1988 年 30 巻 9 号 p. 1925-1934_1

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抄録
過去5年2カ月間に,われわれは33例の癌性狭窄を有する噴門部癌を対象にNd:YAGレーザーによる内視鏡的治療を行ってきた.レーザー照射方法については,非接触法に比較して接触法がスキルス胃癌による全周性の狭窄を含めて容易に治療できること,および狭窄改善に要する期間が短いことなどの点で優れていた.レーザ.___治療による狭窄改善は85%に認められたが,臨床的治療効果の評価では67%に有効であった.レーザー治療による噴門部癌性狭窄患者の延命,およびquality of lifeの向上についてnon-historical control群と比較検討すると,レーザー治療群は化学療法のみで治療された12例と比較して有意に優れていた.一方,非治癒切除に終わった16例の噴門部癌性狭窄症例との比較では有意差を認めなかった.すなわち,噴門部癌性狭窄に対するレーザー治療は,palliative therapyとしては高度進行胃癌における幽門部癌性狭窄の場合の胃空腸吻合術に相当する臨床的効果を有するものと思われた. 以上のことから,術前より非治癒切除に終わることが予想される噴門部癌性狭窄症例や,そして高齢あるいは合併症などの併存に起因するhighriskの症例はレーザー治療の最良の適応になるものと思われた.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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