抄録
メッシニアン塩分危機は,中新世メッシニアン(7.2-5.3 Ma) の後期に地中海で起こったイベントである.約6 Maに地中海が大西洋から孤立したと言われ,その後5.3 Maにジブラルタル海峡が開いて大西洋から海水が再流入する(中新世/鮮新世境界)までの間,地中海の主に海盆底で大量の蒸発岩が析出したと考えられている.世界の海水中の塩の6%に相当する塩がメッシニアン塩分危機に地中海の深海底で析出し,石膏や岩塩といった蒸発岩となって現在も海底下に眠っている.しかし,その全容はほとんど未解明のままである.海盆の孤立や海水の交換などの歴史を詳細に明らかにすることは,地中海メッシニアン塩分危機の全容を知る上で極めて重要である.これまで,底生有孔虫の群集組成や炭酸塩のSrやNd同位体組成などを用いて大西洋と地中海の海水交換などが議論されてきた.本研究では,より高精度に海水の交換や地中海の孤立について検討するため,オスミウム同位体記録(187Os/188Os)に注目し,その可能性を評価する.