抄録
福岡の大気粒子は、表層土壌の再浮遊などによる地域的な影響に加え、北九州工業地帯に由来する煤塵や中国大陸からの風送塵の影響を受ける。これらの因子は現地の大気粒子の化学的な組成に反映されると考えられる。特に鉛は石炭燃焼や鉛鉱石の精錬などの工業活動に伴って大気中に多く放出され、それらのPb同位体は産地によって組成が異なることから、大気粒子中のPb同位体比は大気汚染物質の起源を反映する指標の1つとして用いることが可能である。本研究では、1960年代に福岡管区気象台にて採取された大気降下物におけるPb同位体をICP-MSを用いて測定し、その同位体比から鉛の起源について検討した。