抄録
東京湾では夏期を中心に貧酸素水塊が発生することが知られているが、その原因として考えられる浚渫窪地と貧酸素水塊との相関関係は未だ明らかではない。そのため、浚渫工事前後の貧酸素水塊の動態を知ることが重要である。当研究室では貧酸素水塊の挙動が直下の底質中元素の化学状態に保存されることに着目し、底質中の元素濃度や化学状態から貧酸素水塊の経年評価を行うことを試みている。特に、貧酸素水塊は夏期に発生し冬期に回復するという季節変化に加えて、年単位の変動も確認されていることから、底質を用いて水質の詳細な挙動を明らかにするためには、従来よりも高い時間分解能で解析する事が求められる。そこで、採取した底質コアを鉛直(堆積)方向に可能な限り細かく裁断し、機器中性子放射化分析(INAA)法およびX線吸収微細構造(XAFS)法を用い、有機物の段階的酸化分解に強く関与する元素(Fe,Mn,S)の定量と状態分析を行った。