抄録
土壌からイネへのCdの移行には,土壌の還元に伴う硫化カドミウム(CdS)の生成によってイネへの吸収が抑制される.既往の研究では,土壌溶液中のCdの化学種を熱力学平衡計算によって推定することによって,Cdの溶解性ならびにイネへの潜在的な移行特性が検討されていた.しかし,土壌の酸化還元電位が理論的にCdSを生成し得る条件であっても,実際の土壌中にCdSが存在しない場合があることが,放射光を光源とするX線吸収微細構造(XAFS)分析によって明らかにされた.これまでの研究において,土壌の酸化還元電位(Eh)の経時的な低下あるいは上昇に伴うCdSの生成変化,ならびに土壌の硫黄(S)の化学種との関係性についての検討はなされていない.また,イネ根圏土壌におけるCdの化学形態と地上部組織への吸収挙動を明らかにすることも重要な課題として挙げられる.これらの未解明な点を明らかにすることを目的として,土壌中のCdをXAFS法およびX線蛍光マッピング(µ-XRF)法を適用した研究を紹介する.