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土星の衛星であるタイタンは窒素を主とし、数%のメタンを含む濃厚な大気を持つことを特徴とする。その大気中では、太陽紫外線や土星磁気圏からの荷電粒子、宇宙線等をエネルギー源とした活発な化学反応が起きており、その結果、窒素やメタンなどの単純な分子から、複雑な有機物が生成されていることが確認されている。現在までに模擬タイタン大気を用いた実験が数多く行われているが、その多くは高層大気での紫外線照射や土星磁気圏からの荷電粒子を模したプラズマ放電実験であり、下層大気における化学反応での主要なエネルギー源である宇宙線を用いた実験はこれまでにあまり行われてこなかった。そこで、本研究では、タイタン下層大気における化学反応を調べるため、窒素・メタンの混合気体に高エネルギー陽子線照射を行い、生成有機物の構造解析と反応機構の推定を行った。