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近年の火星探査や隕石研究の結果、現在は寒冷で乾燥した表層環境を保持する火星には、かつて液体の水が存在できるほど温暖・湿潤な時代があったと考えられている。本研究の目的は、火星隕石中の硫黄化学種解析に基づき、火星表層進化に新たな制約を与えることである。対象とした試料は火星隕石(LAR 06319、EETA79001)に含まれる衝撃ガラスおよび衝撃脈である。硫黄の化学種測定にはSPring-8 BL27SUで15 μmに集光されたX線を用い、常温真空下で硫黄K吸収端の局所X線吸収端近傍構造(μ-XANES)測定を行った。その結果、衝撃ガラス・衝撃脈中の複数の分析点から、S(?II)に加え、顕著なS(VI)のピークを同時に検出した。また、水素同位体を用いた先行研究により、これらの隕石の衝撃ガラス中には過去(約40億年前)の表層水成分が含まれていることが報告されている。以上のことから、完全に水が消失する以前から火星表層はS(VI)が形成するほどに酸化的になっていたと考えられる。