地質学雑誌
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論説
河岸段丘礫の表面風化にみる酸化フロントの形成とその移動速度
栗山 健弘吉田 英一山本 博文勝田 長貴
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2006 年 112 巻 2 号 p. 136-152

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抄録

岩石の風化は,地質学的な基本現象であると同時に,応用地質学的な問題にも係わる重要なプロセスである.本研究では,風化の形成速度と酸化フロントでの化学的・物理的変化を把握することを目的に,テフラ研究により時間軸が設定できる段丘礫表面の風化部に注目して研究を行った.その結果,段丘堆積物中の礫の風化速度は0.02~0.05 mm/ka程度であること,礫表面の風化部と酸化帯は必ずしも同一ではなく,また同一の地質条件下でも,エッジ形成タイプと漸移的変化タイプといった異なった風化構造が形成されることが明らかとなった.風化部におけるFeの濃集プロセスは,基本的に外部からの移動・付加によるものと考えられる.しかし,そのプロセスは単純ではなく,とくにエッジ形成タイプでは無機的な反応のみでは説明できない可能性がある.これらの酸化還元プロセスは,放射性廃棄物処分などで想定される現象の化学アナログとしても活用することができるものと思われる.

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© 2006 日本地質学会
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