地質学雑誌
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112 巻, 2 号
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論説
  • 君波 和雄, 今岡 照喜
    2006 年 112 巻 2 号 p. 107-121
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/01
    ジャーナル フリー
    四国西部,幡多半島東岸地域の後期漸新世~前期中新世の清水層・在岬層の混在相は,火山礫岩や火山性砂岩,含火山岩礫泥岩などの火砕岩を含む.火砕岩は,中期始新世の石灰岩を伴うことがある.火砕岩の多くは,土石流や乱泥流などの堆積物重力流に由来する.火砕岩中の火山岩は,アルカリ岩系の火山岩であり,アルカリ玄武岩,粗面安山岩,粗面岩およびコメンダイトからなる.アルカリ玄武岩や粗面安山岩には緑泥石や方解石で充填された発泡痕を有する.アルカリ玄武岩にはカンラン石仮像が含まれる.火山岩類はかなりの程度の変質作用を被っており,ほとんどの苦鉄質鉱物は,緑泥石などの粘土鉱物やFe-Ti酸化鉱物で置換されている.変質過程での移動が少ないと考えられる元素を使ったいくつかの判別図から,火山岩は海洋島起源のプレート内アルカリ岩と推定される.後期漸新世~前期中新世のある時期に四国西部の収束域で海山の衝突があったと考えられる.
  • 大村 亜希子, 池原 研
    2006 年 112 巻 2 号 p. 122-135
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/01
    ジャーナル フリー
    熊野トラフ東部における最終氷期末期から後氷期の堆積作用と相対的海水準変動に伴う陸域・沿岸域の環境変化の関連を検討した.熊野トラフ東部から採取された複数の深海底堆積物コアの層相変化は,海水準上昇による河口の後退と河川の氾濫原堆積物の堆積時期に,タービダイトの堆積が海底谷から遠い場所からなくなったことを示す.半遠洋性泥質堆積物の有機物組成は,海水準上昇期に花粉-草本質有機物・木質-石炭質有機物が減少する.これは海水準上昇期に形成された河川氾濫源や内湾(伊勢湾)に粗粒な陸源有機物がトラップされ,海盆底まで運搬されなくなったことを示す.以上の結果から,海水準上昇に伴う陸域・沿岸域の環境変化は,海盆底に供給される混濁流の頻度と有機物組成の双方を変化させたと考えられる.
  • 栗山 健弘, 吉田 英一, 山本 博文, 勝田 長貴
    2006 年 112 巻 2 号 p. 136-152
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/01
    ジャーナル フリー
    岩石の風化は,地質学的な基本現象であると同時に,応用地質学的な問題にも係わる重要なプロセスである.本研究では,風化の形成速度と酸化フロントでの化学的・物理的変化を把握することを目的に,テフラ研究により時間軸が設定できる段丘礫表面の風化部に注目して研究を行った.その結果,段丘堆積物中の礫の風化速度は0.02~0.05 mm/ka程度であること,礫表面の風化部と酸化帯は必ずしも同一ではなく,また同一の地質条件下でも,エッジ形成タイプと漸移的変化タイプといった異なった風化構造が形成されることが明らかとなった.風化部におけるFeの濃集プロセスは,基本的に外部からの移動・付加によるものと考えられる.しかし,そのプロセスは単純ではなく,とくにエッジ形成タイプでは無機的な反応のみでは説明できない可能性がある.これらの酸化還元プロセスは,放射性廃棄物処分などで想定される現象の化学アナログとしても活用することができるものと思われる.
  • 愛知県設楽地域におけるフィッション・トラック年代測定
    星 博幸, 檀原 徹, 岩野 英樹
    2006 年 112 巻 2 号 p. 153-165
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/01
    ジャーナル フリー
    西南日本の時計回り回転や垂直運動などの事件に年代制約を与える目的で,愛知県設楽地域の北設亜層群と設楽火成複合岩体から32個の岩石試料を採取しジルコンのFT年代を測定した.北設亜層群上部の凝灰岩は17.5 Ma前後のFT年代を示し,これは生層序年代と調和する.他方,設楽火成複合岩体の珪長質噴出物のFT年代は15 Ma前後に集中し,これは膨大な噴出物が約15 Maの短期間に定置したことを示す.こうした結果と地質,古地磁気,古応力場に関するデータから,筆者らは次のようなモデルを提案する:(1)北設亜層群は西南日本の主要な時計回り回転の直前にあたる17.5 Ma頃に,西南日本マイクロプレートが沈降しながら南方へ移動していた状況下で堆積した;(2)西南日本の時計回り回転は15 Maには既に終了していた;(3)西南日本と四国海盆の接合,およびそれによって生じた広域的な地殻隆起は,15 Maより少し前に起きた.
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