地理学評論 Series A
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総説
熱収支気候学の発展と応用
大村 纂
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2024 年 97 巻 1 号 p. 1-14

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抄録

熱収支の諸過程は気候の成因,変化に重要な役割を果たす.従来の収支項の誤差は約±20 W m−2であった.この分野はほとんど伝統的とも言える計算のみによる方法に偏り,観測が軽視される傾向があった.筆者は熱収支項の実測値を収集したGlobal Energy Balance Archive(GEBA)と良質の放射観測のためのBaseline Surface Radiation Network(BSRN)を立ち上げ,さらに大気大循環モデルGlobal Circulation Model(GCM)の熱収支項計算過程の改良に参加して熱収支の精度の高い計算結果を得た.これらを使い新たに熱収支過程を解析して,以前は知られていなかった事実や現象の発見に至った.それらは短波放射に関してMissing absorption, Global dimming, Global brightening,大気長波に関してMissing emissionとよばれる現象で気候システム内の諸過程の理解を高める貢献をしてきた.大気長波放射は全球で増加しており,その率は現行の放射強制力を上回る.放射の長期高精度観測は気候システムのモニターの役割を果たし気候予報の逐次改良に貢献する.

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