本研究は,宮城県のギンザケ養殖業経営体が,主に1995年以降にどのように生産額を増加させたのかを,個別の経営体の生産活動と出荷活動に注目して明らかにした.宮城県のギンザケ養殖業においては,養殖面積を拡大する余地がなく,また海外産サケマスとの競合関係にあった.その中で経営体は,生簀1基当たりの種苗の搬入量を増加させられる仕組みを構築しながら所与の漁場で生産量を増加させるとともに,魚の品質を向上させ単価の下落を防止することで,生産額を増加させていた.種苗の搬入量を増加させられる仕組みの構築と魚の品質の向上を実現するための具体的な取組みは,経営体ごとに異なっていた.その背景には,特定の取組みの必要性や優位性が顕在化していないことがあった.以上から,経営体は自身の直面する条件に応じて種苗の搬入量の増加と魚の品質の向上に取り組み,生産額を増加させていたことが明らかとなった.