人間生活文化研究
Online ISSN : 2187-1930
ISSN-L : 2187-1930
報告
心理的ケアを受けていない被虐待児における家族イメージの変化に関する事例検討
―KFDとRKFDの比較を通して―
小西 一博
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 2020 巻 30 号 p. 647-655

詳細
抄録

 本研究では幼児期に虐待された経験をもつが,心理的ケアを受けていない8歳の女児を対象にして動的家族画(KFD)と回想動的家族画(RKFD)を実施し,虐待を受けた過去と虐待されなくなった現在の家族イメージがどのように描画に反映されてくるか,それはどのような変化を示すのかについての知見を得ることを目的とした.KFDとRKFDを比較すると,共通する特徴として人物像の省略が見られた.彼女は敵意や嫌悪感を抱く家族成員を描画上に敢えて描かないことで不仲な関係を表現した.また,KFDとRKFDの両方で家族関係の不和を強調するように包囲を用いて巧みに家庭内での様相を表出されていた.このことから,表層面では家族成員とうまく生活しているように思われるが,深層面では多く課題が彼女に累積されていると言えた.被虐待児にかかわる支援者は,表面的に評価するのではなく,子どもの心の奥底にある叫びにも目を向ける必要があると考えられた.

著者関連情報
© 2020 大妻女子大学人間生活文化研究所
前の記事 次の記事
feedback
Top