2003 年 12 巻 p. 41-53
ヨーロッパ17世紀は相反するモチーフに満ちた多義的な対象である。18世紀啓蒙主義はその克服を課題としたが、近代の問い直しが求められる今日、17世紀は再び注目されつつある。17世紀を通底するさまざまなメルクマールのうち秩序(ordo)の観念が注目される。しかし、この観点は従来の教育思想史叙述においては意外にも重視されてこなかった。秩序の観念に注目するとき、コメニウス教育思想の体系的な性格がクローズアップされる。コメニウス教育思想は、その実践的性格にもかかわらず先験主義的な哲学的省察の遂行として成立している。しかし、その思想は単なるデカルト的近代の教育学的対応物ではない。同時に、中世的な宗教性やルネサンス科学的な方法論に深く根ざしている。そして、この思想的多義性がデカルト的近代の相対化を可能にしている。この事実は、教育にとっての近代、教育にとっての理性の考察に示唆を与えるであろう。