抄録
ユビナガコウモリの大規模ねぐらのある人工洞穴(地下工場跡)において安全対策とコウモリへの攪乱防止のため、フェンスタイプのバットゲートが設置された。設置されたバットゲートがコウモリ類に与える影響を検討することを目的とし、バットゲートの設置前後における洞穴の利用個体数等を比較した。その結果、ゲート設置前後でユビナガコウモリの個体数に差があるとは認められなかった。また、経年的な個体数の増減の傾向もあるとは認められなかった。本洞穴におけるバットゲート設置による利用個体数への影響は小さかったと考えられ、本事例ではバットゲートはユビナガコウモリに悪影響を与えない有効な安全対策と言える。しかし、他の生息洞穴でバットゲートを適用するためには、異なる構造のゲートについても、コウモリへの影響を評価する必要がある。