保全生態学研究
Online ISSN : 2424-1431
Print ISSN : 1342-4327
陸水域における生物多様性モニタリング
純淡水魚と水生植物を指標とした湖沼の生物多様性広域評価の試み
松崎 慎一郎 西廣 淳山ノ内 崇志森 明寛蛯名 政仁榎本 昌宏福田 照美福井 利憲福本 一彦後藤 裕康萩原 彩華長谷川 裕弥五十嵐 聖貴井上 栄壮神谷 宏金子 有子小日向 寿夫紺野 香織松村 俊幸三上 英敏森山 充永田 貴丸中川 圭太大内 孝雄尾辻 裕一小山 信榊原 靖佐藤 晋一佐藤 利幸清水 美登里清水 稔勢村 均下中 邦俊戸井田 伸一吉澤 一家湯田 達也渡部 正弘中川 惠高村 典子
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2016 年 21 巻 2 号 p. 155-165

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抄録
地域の生物多様性を保全する上で、その現状や傾向を把握することは、極めて重要な課題である。しかし、日本の湖沼の生物多様性の現状や傾向は定量的に評価されていない。過去の生物分布データが散在しており電子化されていないこと、1990年代中頃から自然環境保全基礎調査等の統一的な調査が行われておらずデータが不足していることが、その障害となっている。そのため、本研究では、地方環境研究所、試験研究機関、博物館等と連携し、湖沼の生物多様性の現状を評価することを試みた。全国19湖沼を対象に、純淡水魚と水生植物に関する過去の分布データを網羅的に収集した。また、純淡水魚については7湖沼、水生植物については12湖沼において、モニタリング調査を実施し、現在の分布データを取得した。過去(1999年以前)と現在(2000年以降)の在来種数を比較した結果、純淡水魚においては平均25%、水生植物においては平均48%減少していた。一方、純淡水魚、水生植物のいずれにおいても、国外外来種の侵入が広域で確認され、国外外来種の種数が、在来種の種数を上回る湖沼も見られた。さらに、純淡水魚については、多くの湖沼で複数の国内外来種が侵入していることが確認され、その平均種数は国外外来種と同程度にあった。今回、5つの指標を用いて生物多様性の状態を評価したが、用いた指標間でその結果は大きく異なった。このことから、複数の指標を用いた様々な側面からの状態評価が不可欠であることが示された。最後に、本ネットワークによる湖沼の生物多様性広域モニタリングの可能性と課題について議論した。
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© 2016 一般社団法人 日本生態学会

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